2359人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
地下鉄の階段を駆け上がり、会社へと急ぐ。
連休の初日でこんな時間帯では休日出勤者なんていないだろう。
見えてきた会社のビルにはほとんど明かりがついていない。
それでも海事のある八階の一部に電気が点いているのを見て、微かな希望が湧いた。
「お疲れさまです」
「ああ、亀岡さ…?!」
顔パスの守衛さんが私の汚い顔を見て目を丸くするのも気に留めず通用口を走りぬけ、エレベーターに飛び乗り8を連打する。
連打して早く着く訳でもないだろうにと、今までそんな人を見ると内心小馬鹿にしていたけれど、初めて気持ちが分かる気がした。
けれど、息急き切って駆け込んだ海事の大部屋には誰もいなかった。
篠田の席も、きちんとパソコンは閉じられたまま。
「やっぱり…」
しばらく放心状態で入り口に佇んだ後、急にまた痛み始めた足でヨロヨロと篠田の席まで進んだ。
彼の椅子に触れると、キィ、と小さく軋む音がした。
彼に会えない今はそんな音までが胸に寂しく染みる。
最初のコメントを投稿しよう!