1914人が本棚に入れています
本棚に追加
脚をもう少し持ち上げて
完全に片足で立たなければいけない太陽は
その重そうな着物のせいもあって
指先で肩に触れているだけじゃ、バランスを保てない。
しっかりと肩に捕まりながら
足先に口付けた俺にうろたえている。
「んっ」
足の甲にひとつ
親指にもひとつ
唇を落とすと
声を詰まらせながら、躊躇っているのが
しっかりとしがみつく手の指から伝わった。
「ライアンだよ」
「ァ……ん、あ、そんな、とこ……」
唇で肌の質感を確かめるだけじゃ物足りない。
親指と人差し指の間を舌先でくすぐったら、肩を掴む指先が更に力を込めた。
「ライアン、言ってみて」
「ラ、イアン……ん、ァ……足なんて、お客さんが」
「ライアンだって」
甘い、甘い
蜜みたいな溜め息に、身体がゾクッと煽られる。
「太陽……」
躊躇う足は捕まえたまま
肩に手をかけて、かろうじて転がらないようにと耐えている太陽を見上げた。
真っ黒な瞳が困ったように潤んでいる。
「君を買った」
「っあ、ァ……」
「だから、この身体、全部、俺のものだろ?」
足をそっと降ろして
でも
掌はそのまま離れることなく
ゆっくりと上へ侵入していく。
太陽の表情を見上げ
じっと見つめながら
彼が俺の掌に翻弄される姿を堪能する。
膝を撫で
膝裏をくすぐると
気持ち良さそうに瞳を伏せて、真っ黒な瞳が濡れる。
長い船旅でずっと見上げていた明かりひとつない夜空よりも
もっと綺麗なものがここにあるんだと思った。
星明かりだけの空は宝石をちりばめた以上に綺麗で
レイに危ないから船室へ戻れと何度言われても、星空が見える晩は外に出て、じっと見上げていた。
あの空よりも
美しいものがここにある。
最初のコメントを投稿しよう!