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「そ、うです。貴方の……」
あの艶のある声がそう告げて
あの星空よりも美しい瞳が
俺だけを捉えた。
「あ……」
この声も、瞳も、身体も
俺が買った。
「あァ……ライ、アン」
名前を呼ばれただけで
熱が迸るくらい興奮しながら
指先は色が乱れた布の中へと侵入する。
太腿の内側へと
指先が。
「待って!」
「……何?」
「あの、もしも、わかっていないなら」
「……」
今にも涙が溢れそうな瞳をじっと見上げて、次の言葉を待つ。
君が言いたいことなら、わかっているんだ。
ここに来たばかりの異国人で、花街に興味があって
単純に覗き込んで見物していただけ。
ふと立ち寄った店先で、気に入ったと
金額をふっかけられていることもかまわず
あるいは知っていても
道楽だからと気軽に大金を出す、馬鹿な一見の客。
この遊郭のことも
花魁のことも
あまりわかっていない異国人の俺が
男の花魁に驚くんじゃないかって
そう
思っているんだろう?
「こんな着物を着ておりますが、私は……」
「あぁ」
知ってるさ。
君が男だっていうことは。
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