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街を出て無事に森へとたどり着き、小屋へと戻ったレイナの目に飛び込んできたのは、無事とは言いがたい、異質な光景であった。
小さな木でできたレイナとカリスの小屋は、一部の残骸のみで壊れ果てていた。屋根も、壁も、ほとんどなくなっていた。同時にレイナの目に映るのは銃を構えたカリスと、自分の何倍もありそうな巨大な茶色の毛の犬、そしてその犬と負けないくらい巨大な、黄金の毛並を持つ狼の姿だった。
「あー? この臭い。子供だな? お前、子供がいたのか?」
「はっ。馬鹿言っちゃいけないねえ。その子はあたしの孫だよ。レイナに手を出してみな! 許さないからね!」
「ふん。ガキには興味はねえ。俺様が欲しいのは、強く、たくましい最高の獲物だけさ。お前みたいななあっ!!」
狼は二本足で立ち、両手を上へと広げ、咆哮する。大地が震え、空気が震える。レイナは思わず腰をぬかしてその場にへたりこんだ。
「あ、あ……あ……」
自分の家がない。見たこともない大きな狼がいる。犬がいる。カリスがいる。わかる。それはわかる。だが、それが一体どういうことなのか、レイナは感覚として状況を理解できない。どうしたらいいのかわからない。
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