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もう何度目か。ディオミスが力強くほえた。カリスはその様子を見て、まずいと感じていた。今放ったのは自身の最高の技だ。正直この一撃でしとめるつもりであった。しかし眼前の敵は傷はついたものの、おたけびをあげ、力を誇示し、まだまだ余裕そうである。長期戦になれば間違いなく自分が負けることをカリスはわかっていた。
「さあ! 次は何をする! まだ何かあるのか!?」
カリスの頬に汗が流れる。カリスはちらりとレイナの方を見た。レイナは少し離れたところで座ったまま固まっていた。無理もないまだ六歳の少女なのだ、たとえ逃げろと伝えても、何もすることはできないだろう。
なんとかレイナを逃がす方法はないものかとカリスは考える。近くにハンターがいればこの騒ぎを聞きつけてくれるだろう。しかしディオミスは並のハンターが何人かやって来たところで対処することは不可能である。対処できるとすれば自分と同じ、ハンター最高クラスであるS級の人間だけだとカリスは思った。しかしS級は国内に数名のみ。そう都合よく近隣にいることはない。
カリスはさらに考える。自分がこの狼を倒せなかった場合、レイナを見逃してもらえるのか。先のディオミスの発言からだと見逃してもらえそうだが、狼のことだ、気が変わるかもしれない。どうすれば……。
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