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『それ』がすっと息を吸い、空気を切り裂く雄叫びをあげる。周囲の動物達は全て畏怖の念を抱き、あるものは一目散に逃げ出し、あるのは服従の意を示し、またあるものはその場に固まることしかできなかった。
三匹の狼達も続いて天へと顔を向けて雄叫びをあげ、自らの力を、立ち位置を誇示する。
森はたった一声で、のまれてしまった。そこでは、動物同士で今まで積み重ねてきた生態系は無意味と化す。『それ』に喰われるか否か。ただ、それだけである。
「では、喰ってくる」
今、一つの巨大な悪意が、一人の善良たる者の住処へと、迫るのであった。
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