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第1章
「お使いお使い楽しいなー。りんご、りんご。真っ赤なりーんーごー。りんごは丸いのー!」
雲一つない空の下、一人の幼女が街道を歩んでいた。名をレイナと言った。年は六歳になったばかりで、祖母であるカリスに街までりんごを買うように頼まれていた。赤い頭巾をまとい、左手にはりんごを入れるためのかごを引っ掛け、右手にはりんごを買うための硬貨を握り締めていた。
その日のレイナはこれまでにないほどのご機嫌だった。何せ初めての一人でのお使いである。レイナは十回以上街まで来たことがある。りんごを買ったこともある。しかしそれは全て、カリスと一緒だったのだ。
一人で出かけるということのわくわく感を胸に秘めるということなど到底レイナにはできなかった。
歌を歌い、ぴょんぴょん飛び跳ね、喜びを全身で表現しながらるんるん気分で整備された街道を進む。
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