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店主があごをさすりながら聞く。まだ二十代半ばの年齢ながら、一人で店を経営しており、とても立派な男性であると、カリスからレイナは聞いたことがある。レイナもカリスやこの人のように一人で何でもできるようになりたいと常々思っていた。
「えっと、りんごを……ひいふうみい……三つ! 三つください!」
レイナが両手を、うんしょっと伸ばし、かごと硬貨を主人へと渡す。
「はい、三つね。後、おつりもあるね」
主人はそう言うと、近くにあったりんごを三つ取り、かごに入れておつりとともにレイナへと差し出した。レイナはまた両手を伸ばし、それらを受け取る。街に来る時と違い、かごにはりんごの重みがある。レイナはそれが、自分が頑張った証のような気がして嬉しく思った。自然と頬も緩む。
「ありがと! じゃあ早く帰らないとおばあちゃんが心配するから帰るね! また来るねおじさん!」
「はい、いつもどうも。また待ってるよ」
レイナがぶんぶんと手を振りながら店を後にする。主人もにこやかに手を振り、それを見送った。
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