67人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
地盤が変わった。
いよいよオニ発祥の地と呼ばれる、最北西端の地である岩場に足を踏み入れた。
この岩場は面積が2キロ四方程度しかないわりに、中央の岩の塔は高度が300メートルもある特異な形状を持っている。
目指すは岩の塔の頂上。
かつてはオニ発祥の地として以上にムゥ大陸の最高地点として賑わっていたが、いまや安全性の問題から誰一人として足を踏み入れない。
今の私たちにとってはそれが功を奏している。
一応道路はまだ残っているし、頂上の休憩所を計画実行の場とすることは草案当初からタカシが決めていたことだ。
大陸はクリスマスというこの日において、雪の積もらぬこの地は季節感がない。
岩山に沿って作られた道路を登ると、車があの青空へと向かって行っているような錯覚を覚えてしまう。
普段ならばこの晴れ晴れとした空のように穏やかな気持ちになれたことだろう。
しかし、そうはいかない。
私はタカシの計画を遂行しなければならない。
彼の40年間は、私の40年間でもあった。
初めて計画を聞かされたのも私、初めて協力したのも私。
っていうか、私だけ。
なぜタカシにここまで入り込んでいるのかは私でも分からない。
タカシのことはいまだに分からないことも多い。
でも、それでも。
「ユウコちゃん、着いたよ。山の頂上だ」
「ああ。ありがとう、BJさん」
頂上は先端が削り落とされ、直径200メートルほどの盆地になっている。
そこにあるのは休憩所と広大な駐車場。
無論、こんな廃れた観光地の駐車場には車一台ありはしない。
……いや、訂正、一台だけある。
同じく商業用バン。
そしてその隣では電動ドリルでせかせかと何かを組み立てる怪しい影。
彼の名はキテレツ。
この計画の鍵を握る男だ。
「おう。遅かったね、ユウコさん」
「そんなことないわ。あなたが早すぎたのよ、キテレツさん」
最初のコメントを投稿しよう!