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ゴーグル型サングラスを押し上げるその仕草は、だらしのない体型により様にならない。
たるんだ腹の肉は黄色いパーカーをいまにも破らんばかりだ。
しかし、彼の知識量と技術力にはタカシも私も一目置いている。
キテレツが挨拶とばかりに立ち上がったが、女性としては比較的背の高い私は彼を見下ろしてしまう。
「いいや、案外妥当な時間だと思う。目標物到達までと帰還までの時間を君ユウコさんたちの作戦に合わせるには、発射台の完成を済ませて置くのが必須だったんだ」
「そう、さすがね、キテレツさん。いまのところ目標物までの距離は?」
「6850万キロ。火星よりもやや近い感じかな」
「分かった。あとを任せるわ」
「了解」
「……BJさん、マスクさん。私達は私達の仕事を始めるわよ」
「了解だ」
「了解や」
「僕は?」
「サキチは……そうね、BJさんのお手伝いをお願い」
「分かりました」
私の声を合図に、キテレツは自分が乗ってきたバンの、私達は私達が乗ってきたバンの荷台に向かう。
私とマスクは台車に置く。
マスクが制作した特別製のコンピューターとモニターを五台ずつ。
BJとサキチもまた別の台車に置く。
ガソリン原動機式の発電機を、二台。
キテレツはスロープを使い、ベールに覆われたキャスター付きの等身大の物体を、バンの荷台から引っ張り出す。
パソコンと原動機は屋根付き休憩所のテーブルへ。
手慣れた手つきで次々と配線していくマスク。
あやうくオイル注入口にガソリンを入れかけるサキチ、勢い良くリコイルを引いて原動機に命を吹き込むBJ。
キテレツは先程組み立てた発射台にベールを被った物体を設置した。
電力はBJとサキチが動かした発電機からマスクの配線したACアダプターを通り、パソコンの給電ランプが点灯する。
そして、私。
半透明のペットボトル製のロケットを手に、駐車場の中央へ。
ロケット内部にはマスクが一から制作した自家用の通信衛星が埋め込まれている。
「ユウコさん!! パソコンのセッティング完了したでぇ!」
「了解。打ち上げるわよ!」
ライターで導火線に火をつける。
パチパチという軽快な破裂音が細かく刻まれる。
さあ、打ち上がれ。
天まで登れ。
そして、我々の計画を導く灯火となれ。
パシュウウウウゥゥゥゥ……!!!!
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