-隕石に関する記事-

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「マスクさん、到達時刻は?」 「通信衛星には上空で三段階のブーストがかかるように細工しとる。高度36000メートルに達するまでに約15分かかるで」 「十分だわ。BJさん、手駒の全てに“例のバルーン”とワクチンを配ってるはずよね?」 「ああ、バッチリだ」 「オーケー。BJさんはサキチと一緒にキテレツさんの作業を手伝ってきて。爆薬の扱い方も貴方が一番分かっているはず」 「了解だ。モニター頼む」 BJは再びバンに戻り、彼愛用の黒いアタッシュケースを取り出した。 その中には恐ろしいほどの威力を持つダイナマイトが入っていると彼が言う。 しかしそれを使うのは後だ。 ワンピースの右ポケット、ここが定位置。 ポケットから青い小型USBメモリーを取り出し、私はパソコンの前の席に着くと同時に端子へ挿した。 パソコンを起動。 ウィンドウズでもマックでもリナックスでもない、マスクオリジナルのOSロゴマークが表示される。 「ユウコさん、無駄の一切を省いたOSや。USB機器の認識とインターネットしかできひんようにしとる」 「ありがとう。うまく動作してるわ」 起動からわずか3秒。 パソコンはアイドリングに入ると同時にUSBメモリー内部のソフトを起動した。 その名はFuture。 未来を意味するロゴマークが画面に表示されると同時に、私は首を鳴らした。 そしてピアノを構えるようにキーボードへ手を置く。 そういえば幼い頃、ピアノを習ったことがある。 独奏の。 左手でコードを並べ、右手でメロディーを紡いでいく。 つまらなかった。 自分の演奏に自分の演奏を重ねて何が楽しい。 私はオーケストラが好きだ。 私はオーケストラの演奏会を荒らすために鑑賞席に入り、やりのけた。 壇上に乱入し、オーケストラの演奏に重ねるようにして、私が紡ぎたかった音楽を紡いだ。 私は一人が嫌いだ。 一人では何もできない。 多重演奏、それこそが私の求めていた音楽だった。 そして今だって、一つの計画を仲間とともに遂行している。 快感さえ覚える。 オーケストラに乱入したあの日のように。 そう、あの日演奏した楽曲名は今も脳裏にこびりついている。 ポリフォニー13番「未来と継続」。 最後のコードは、Eマイナー。 希しくも、Enterの頭文字と同じである。 「……ライン。ハック、完了」  
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