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「安心して、ワクチンを接種しているならあなた達には無害よ。理解できたら全員定位置について。私が合図を出すまで全員待機。一旦切るわね」
「後を任せた」と言う代わりに、マスクとアイコンタクトをとる。
モニターの赤い点が定位置に着くと、赤から青に変わる。
その様を見届けるのがマスクに任せた次なる仕事。
私は席を立った。
休憩所から駐車場へ。
そこにいるのはBJ、サキチ、キテレツ。
私が歩み寄ると、六つの眼が私に向けられる。
「キテレツさん、宇宙船の調子はどうかしら」
「ああ、バッチリだよ。ダイナマイトの取り付けも完了した。だけどユウコさん、一つだけ否定したいね」
「なにを?」
嫌みたらしく笑うキテレツは、満を持するようにして等身大の物体のベールを剥ぎ取った。
黒いベールの下にあったのは、少々荒い塗装ながらゴールドに輝く金属の塊。
上空へ向けて肥満気味の円錐型を描く。
「ユウコさん、これは宇宙船じゃない。“戦艦・ガリレオ”だ」
「あぁ、そう」
得意げに鼻を鳴らすキテレツの横を通り過ぎ、私は宇宙船の側に歩み寄った。
キテレツの話によるとリモコンによる遠隔操作で操縦するそうで、運転席のようなものはない。
頭に思い描くロケットの先端部だけ、と言うべきだろうか。
全身をゴールドのカースプレーか何かで染められているが、いわゆる腹の部分は未塗装。
そこに取り付けられているのは、BJが持ち込んだ直方体の巨大なプラスチック爆弾。
私の顔面4つ分はある。
取り付け部分は底部に金属製のステーで二箇所、うち一箇所はネジが緩んでいる。
「このネジの緩みはわざとなの?」
「うん、もう一箇所を弾き飛ばすことでそこも自然と外れるように細工したんだ。二箇所とも締めたら爆弾とうまく分離できない」
「オーケー、完璧よ。発射は打ち合わせ通りバルーンの浮遊開始と同時ね」
「任せてくれよ。こっちも完璧だ」
「BJさん、パソコンに戻りましょう。間もなくあなたのウイルスが動き出すわ」
「了解。楽しみだ」
型式ばった敬礼をするキテレツに会釈を返し、BJとサキチを連れ休憩所に戻る。
おとなしくパソコンを眺めていたマスクはすぐに私たちに気付いた。
「マスクさん、手駒の動きはどう?」
「5名ほど手こずってるみたいやけど、誤差の範囲内や。いつでもいけるで」
「オーケー」
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