-隕石に関する記事-

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パソコンの前に腰を下ろすと、計画に係る風景が死に際の走馬灯のようにして浮かんできた。 私達の手の中で思い通りに動く、かつては自殺志願者だった8000の手駒。 都市部の者、郊外の者、建物の中に入る者。 私の合図で一斉にバルーンを解き放ち、致死ウイルスをばら撒くであろう。 倒れる大量のオニ、オニ、オニ。 私にサイコパスの気質があるとは思ったことがない。 しかしその光景を見ることは、私の長年の夢である。 私の長年の夢であり、それは同時にタカシの夢でもある。 「……もしもし。みんな準備はいいかしら。カウントダウンを開始するわよ」 タカシの夢、それはタカシのお父様の夢とは全くの正反対だった。 タカシはヒトに対し並ならぬ興味を持っている。 語弊覚悟で言うならば、まるでヒトという宗教にはまったかのようだった。 インチキ宗教にはまる馬鹿との違いは、全てを自分で調べ上げ、そして方向性までもを自分で決めたこと。 「5」 そして私も、タカシの計画という宗教にはまった。 それもまだ幼い頃のこと。 タカシの計画は崇高だった。 オニを殺す? オニを滅ぼす? そんな安っぽい目的ではない。 「4」 安っぽい目的ではないから、計画は複雑。 ヒトを殺し、オニを騙し、宇宙の小惑星までもを巻き込む。 全てはヒトを繁茂させるための計画。 ん、ヒトのための計画? それですら安っぽいわ。 「3」 ヒトのためであり、この星のため。 だが同時に、オニのためでもある。 「2」 オニより優れた生命体であるヒトにこの星を託す。 しかしこの計画の最終目的は。 「1」 “桃太郎”という昔話を作り上げ、オニの名を恒久にこの星に伝えてゆくことである。 「発射」   ゴゴゴォォォォォォォォォ…… 戦艦ガリレオのブースターに火が灯る。 この瞬間、ムゥ大陸上空に、無数の風船と一台の宇宙船が飛び上がった。 それはまるで、何かの始まりを祝うパレードのようだった。  
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