-鬼のあるべき姿-

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「……よし、無事に破裂したようだ」 BJの低い声が、作戦の進行を告げた。 風船内のウイルスを含むガスは空気よりも重いので、拡散しながら地に降る。 そしてウイルスが降り注いだ時、それに触れた者の体内で爆発的に繁殖し、発症する。 潜伏期間はわずか3分。 空気感染と早すぎる潜伏期間という性質は、ウイルスの作成者であるBJとタカシによって付け加えられた。 「ウイルスの性質のことは聞いてるわ、BJさん。このウイルス、なんて言うの?」 「カゼだ」 「風?」 「いや、“風邪”。風に邪悪の邪と書く。タカシが言うにはヒト固有のウイルスらしい。オニの我々は免疫が全くない」 「ヒト固有……ね」 「だが、ワクチンのほうはタカシとユウコちゃんで用意したんだろう? どうやって8000人分ものワクチンを作った?」 「ごめんね、嘘なの。本物のワクチンは私達と、ランダムに選んだ数名にしか渡してない。他に渡したのは全部ただの真水よ」 「「「「なんだって!!!!????」」」」 BJ、マスク、キテレツの視線が突き刺さる。 そう、ワクチンなんて嘘。 8000の手駒は必要だが、8000の仲間は必要ない。 数百名に本物のワクチンを送付したが、隕石の衝突をも生き残る確率を計算すると、おそらく百名にも満たない。 それでいい。 タカシの計画……③に必要な仲間の数は百名ですら多すぎる。 「8000名もほぼ全員死ぬと考えて。分かってるわよね? 手駒は手駒であって、あなたたちみたいな仲間とは違うのよ」 「ユウコさん、自分、なんで平気で嘘つけるんや……!?」 「私はこの計画のために生きてきたの。この計画が失敗したとしたら、私は自殺すらする覚悟よ。……クロノスにいた頃の、あなたたちのようにね」 もはや誰も見ていないパソコンのモニター。 監視カメラの端で、仕事中のオニが倒れ始めた。 「キテレツさん、分かってるわよね?」 「……もちろん。すぐに隕石をぶつけてやるさ」  
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