-鬼のあるべき姿-

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―――画面に表示されたハザードマップが、徐々に赤く染まってゆく。 スマートフォンから地上波のニュースを確認すると、風船の破裂から15分ほどで報道が始まった。 しかし、その中継中に血を吐くレポーターとそのスタッフ。 実に良い。 ムゥ政府よ、隕石のことなど忘れてしまえばいい。 ただ目の前のウイルスの繁茂に悶え苦しむだけでいい。 私の言い放った言葉に愕然としていたBJも、いつの間にかハザードマップに食らいつくようにして画面を眺めていた。 自殺志願者とは、同時に自愛者でもある。 タカシがクロノスに目を付けた理由はそこだ。 自分を殺すのと、自分以外の全てを殺すのは同じこと。 BJだけではなく、キテレツも、マスクも。 ここに正常者などいないのだ。 正常者などいない? いや、約一名、いる。 彼は確か、岩の塔の麓、鬼気(ひとけ)を忘れた資材置き場にいるはずだ。 彼の言葉を思い出す。 「継続」と言う言葉が嫌い。 これから何が起こるかなんて、誰にだって分かりはしない。 ……いや、二項目は確か途中で聞きそびれたはずだ。 ならなぜいま口に出せたか。 その言葉は、私の言葉。 キテレツの放った言葉に対し、私自身が思わず呟いてしまったのだ。 「ユウコさん!! ダイナマイトが分離できない!」 作戦に支障をきたす言葉は限られている。 しかしそれがどのタイミングで出てくるかは分からない。 誰にだって、分かりはしない。 「どういうこと!? 原因は!?」 「ダイナマイトを固定してるステーが上手く外れないんだ! あらかじめ緩めておいたほうの!」 「……あっ……」 私はその小さな声を聞き逃さなかった。 BJの左隣にいる子供。 「サキチ……なにをしたの?」 「ネジが緩んでたから……僕、締めたんです……」 「なっ……!!??」 ……嗚呼ッ!!!!!!!!!! サキチをぶつ代わりにテーブルを思い切り殴りつける。 サキチは知らなかった。 だからサキチは悪くない。 しかし、使えない。 悪いのはサキチまでもを計画に引き入れた、タカシ。 なぜ。 そうだ、タカシ、なぜこんな崇高な作戦に子供を混ぜた!!!! なぜBJのワガママを許した!!!! あなたの作戦は完璧だった。 この子供さえ入れなければ!!!!!!  
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