-オニの歴史と霊気について-

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-オニの歴史と霊気について-

 鬼歴元年、つまりはおおよそ8000年前、通称「ムゥ大陸プロジェクト」の全行程が完了したとされる。もとは小さな岩の島だったらしいが、そこを拠点に鬼工(ヒト語で人工)の陸地を放射状に建設、範囲は太平洋ほぼ全域に及んだ。 -中略-  この星の他領域には「ヒト」と呼ばれるオニによく似た生物が生息。生物学上の文明の発生はヒトの方が遅れるが、オニは海水に弱くムゥ大陸外への侵攻が難しかったため、ムゥ大陸外は全てヒトが支配していると言い換えても良さそうだ。  身体的特徴には大きな相違点はない。しかし、ヒトの寿命はオニの半分、それに対し知能指数はオニと同じ程度という研究結果も出ている。また、オニが持つ特徴として当たり前とされていた「霊気」を持たないという特徴も発見。それにより、我々オニが持つ霊気が霊気を持たぬ生物に対し与える影響、そして霊気自体の性質も明らかとなった。 ①霊気はオニにとって魂や自我という言葉に置き換えられ、霊気のみを抜き取り他の生物へ憑依させることが可能。憑依に必要な「封印の護符」「解呪の数珠」はヒト固有のものであり、我々オニは研究対象とするどころか手に入れるまでにもまだ至っていない。 ②霊気はヒトに対し不可抗力で幻覚症状を起こす。発する言葉を全て攻撃的に受け取るため、実質的に会話は不可能。さらに体裁にも影響を及ぼす。ツノの生えた頭部に恐ろしい表情を浮かべる顔面、そして毒々しく色付いた肌。肌の色は服の色に依存するとのこと。これがヒトから見た我々オニの姿である。  なお、この霊気に関する二項は年齢を追うごとに強くなるようで、幼いオニならば多少の交信はすることができるようだ。  以上のことから、オニとヒトには生物学よりもさらに上の水準において相違点を読み解くことができた。特に霊気においては、オニとヒトが対話を計れぬようにという、この世界を創造した神による意図さえ感じ取れる。  ユウタ・カトウ著  「探査録~オニとヒトの章~」より、一部抜粋
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