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鮮やかなピンク色に染まっていた桜の枝は、青々とした緑の葉にかわった。
放課後の教室で、窓からそよぐ枝を眺めていると、
「おーい。りぃ、帰ろぅー?」
友だちのひろちゃんが、私を呼びながら入口から笑顔を覗かせた。
「うん、今いく」
ひろちゃんは隣のクラスだけど、家が近くて、中学も同じだった。昔からの親友。
教室をでて、お喋りしながら廊下を歩いてると、階段の手前で背の高い男子とすれ違った。
そのときふわりと柑橘系の香りがして、無意識に顔を上げたけど、すでにうしろ姿。
清潔で皺のないシャツ。
さらさらした黒髪が窓から射す光りに反射して綺麗。
大人っぽい背中。
その先輩らしき男子が行ってしまって、声が聞こえないことを確信してから、ひろちゃんはしみじみ言った。
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