蒼先輩との出会い

2/37
181人が本棚に入れています
本棚に追加
/382ページ
鮮やかなピンク色に染まっていた桜の枝は、青々とした緑の葉にかわった。 放課後の教室で、窓からそよぐ枝を眺めていると、 「おーい。りぃ、帰ろぅー?」 友だちのひろちゃんが、私を呼びながら入口から笑顔を覗かせた。 「うん、今いく」 ひろちゃんは隣のクラスだけど、家が近くて、中学も同じだった。昔からの親友。 教室をでて、お喋りしながら廊下を歩いてると、階段の手前で背の高い男子とすれ違った。 そのときふわりと柑橘系の香りがして、無意識に顔を上げたけど、すでにうしろ姿。 清潔で皺のないシャツ。 さらさらした黒髪が窓から射す光りに反射して綺麗。 大人っぽい背中。 その先輩らしき男子が行ってしまって、声が聞こえないことを確信してから、ひろちゃんはしみじみ言った。
/382ページ

最初のコメントを投稿しよう!