ハ雲立つ出雲の国の物語

3/200
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
広場は少しだけ高くなっていて、里の風景が見渡せる。 平日のせいか私達しかいなくてもう一度思い切り深呼吸をしてみた。 引きこもりになってから2年近く、人目を気にせずこんなに自由に出来て本当に気持ちがいい。   広場の左側には淡いピンクや濃いピンクの八重桜が満開に咲いている。  右側にはもう花が散った桜の木の若葉が時々風に揺れている。 少し落ち着いたら、目が ねがい桜を探している。 「ねえ ねがい桜はどの木なの?」と千晶に聞いてみる。   「鳥居の左側に3本が向きあって立っていて、ー本の大木のように見えるでしょ。あれが、ねがい桜よ。今花が満開ですごく綺麗よ。」 彼女が言う通り大木のように見える桜の木は見えるが、その木には花などは見えず若葉だけが風に揺れている。 首を傾げている私達に千晶は クスッと笑って言った。  「さあ行こう。もう少し近づいたら花が見えるわ。」 近づかないと見えないなんて、すごく小さな花なのかな?と思いながら千晶に手を引かれて行った。  5m、4mと近づいた時、みんな あっと言って立ち止まった。 今まで若葉だけだと思っていたけれど、その木には若葉色の花が満開に咲いていたのである。「まあ、本当に緑色の花が咲いているのね。なんて綺麗なんだろう。」  そう言いながら、祖母が急いで桜に近づいて行く。 私達も急ぎ足で後に続いて行った。 ねがい桜は八重桜だから花は大きくてふっくらしている。 葉と花が同じような色をしているから、近付いて初めて若葉の何倍もの多くの花が咲いているのが分かるのだ。 少しの若葉とたくさんの若葉色の花が合わさって、小さな花の森のように思える。  その回りをみんなでゆっくりと歩きながら花をながめる。  なんて不思議な色の桜だろう。 、 「回りから見るのも楽しいけれど、実はねこの木の中に入るともっと綺麗だけど入ってみる?」 千晶の言葉に私はすぐに 「入りたい!」と答えた。  そして千晶の後にみんな続けて入って行った。   中には2つのベンチがあり中央に細長いテーブルがあった。 母と兄は手に持った花見弁当をテーブルに置いた。それから皆で木の中から外を眺めた。 3本の桜は太い枝を上下左右に張り 、回り中 緑色の花がいっぱい咲いていて、まるで花籠の中にいる気持ちになってくる。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!