第1章

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玲子は、溜息をついた。 冬の訪れが窓ガラスに白い蒸気となって小さな模様を描いている。 11月始めの日曜日。 11月の始めとは思えない大寒波が東京を包んでいた。 この日、多忙を極める玲子にしては珍しく予定の入っていない一日だった。 中津川玲子24歳。 抜けるような白い肌と、黒く濡れた瞳。 驚くほどの小さな顔に、肉感的な唇と、小柄ながらバランスのとれた抜群のプロポーション。 ショートカットの金髪が、彼女の持つ華やかさを引き立たせている。 中津川家は天皇家に仕える名門公家の血筋であり、玲子には自然にその高貴な威厳のようなものが備わっているらしい。 若さ特有の眩いばかりの輝きの奥に何かしら深い憂いのようなものが、玲子の魅力を単なる美しさではない次元に導いている。 麹町にある広大な中津川家の邸宅には、玲子と執事のオバラ、あと数名の家事手伝いの女性がいるだけである。 玲子の父親の礼央那は政府の外交顧問のようなことをしており、母のかおると共に中東を飛び回っている。 従ってここ数年は、ひとり娘の玲子が留守を守る形になっている。 それでもいつもは、なにやかやと来客があるのだが、今日はそれもなく、静かな日であった。 応接間のソファに身を沈め、玲子は物思いに耽っていた。 白く細い指を顎に軽く添えて、軽く息を漏らす。 深緑のベルベット生地に金糸で刺繍がほどこされたソファ。外枠は渋みのある茶色の木枠で一見でアンティーク物だと分かる。座ると体を包み込むような弾力に静かに沈み込んでいく。玲子一人横になってもすっぽり包んでしまうくらい大きい。 玲子は、白いサテンのスリップドレスをしどけなく纏っている。柔らかい生地が体のラインにくっきり沿って玲子のプロポーションの美しさが際立っている。少し広がっている裾のあたりは、玲子が動くたびにゆるやかにひるがえる。 なんとも蠱惑的なシルエットが玲子の甘い体臭とともに広がる。 玲子は物思いに耽っていた。 ここ暫く玲子はある不思議な事件に関わっていた。 その事件は玲子にとって意外な結末を迎え解決された。 後味の悪い事件であった。 image=488922464.jpg
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