第1章

2/31
前へ
/31ページ
次へ
 経営者としての堤清二は、神話化されている。  西武セゾングループの「文化戦略」と「イメージ戦略」によりつくられた、その幻想を殺すのが本稿の目的である。  堤経営を三点から検証する。 一、堤と言えばコンセプト重視の「文化戦略」「イメージ戦略」で知られているが、実態は「器つくって魂入れず」であったこと。お題目は立派だが実行力に欠け、オペレーションを軽視していたこと。 二、先進的であったと評されることが多いが、堤が史上はじめて手をつけ成功させた事業はほとんどないということ。 三、独創的であったという評に対する疑問。堤/西武セゾングループが唯一無二の事業を成し遂げたものはほとんどない。  むしろ一九八〇年代までの日本によくみられた、利益率ではなく売上至上主義で、本業とのシナジーも見込めない事業に対して目的不在のまま多角化に邁進した典型的な経営者であった。  さらに言えば、真に独創的な経営は他社には容易にはマネしがたい「しくみ」を築くはずだ。  だが西武セゾングループ傘下の企業がなしたことの多くは、たとえ業界で初めてスタートしたことであっても、単に順番が早いだけで簡単に追随、模倣することができるものばかりだった。  つまり、コンセプトが先進的で独創的な店舗展開、事業展開をしたと讃えられることが多い堤だが、実態は ・コンセプト倒れでオペレーションはずぶずぶ ・それほど先進的ではなく、大概は先人がいるところに後出しじゃんけんしている ・他社がマネできるようなことばかりで独創的ではなく、他社がマネできないことは単に採算が取れないから手を出さないだけ だった。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加