兄と弟

2/10
589人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
「ちょっと春樹兄さん。パジャマ脱ぎ捨てながら歩かないでよ」 朝ご飯を食べ終わった春樹が、パジャマを脱ぎ散らかして部屋へ戻って行く 誰が完璧な生徒会長様なんだよ 「うっせーな。夏樹何もしてねぇだろ。片付けろよ」 胸がズキッと痛む 何もしてないじゃなくて、何も任せて貰えないのだ 高1になっても、夏樹はやっぱり小さくて体力も無い 勉強も出来ないわけではないが、出来るわけでもない 唇をキュッと噛み締めて、散らかった春樹のパジャマに手を伸ばす 「何やってんの。チビでも邪魔だから退いてくれる?」 「ちょっ、離せ。降ろせよ」 制服を着た冬樹にひょいと抱き上げられ、急に高くなった視界が怖くて、声が震える 「気に入らない。春兄のパジャマいつまで抱き締めてんのさ」 「あ、せっかく拾ったのに」 冬樹が床に降ろした夏樹の手から、パジャマを取り上げ放り投げてしまった 拾わないと、春樹は自分で洗濯機に入れたりしないから 冬樹に背を向け、パジャマを取りに行こうとした腕を大きな手に掴まれた 「痛っ、冬樹痛い」 「ねえ、もう春兄のパジャマ抱き締めたりするなよ」 夏樹の華奢な手首を掴んだ冬樹が、低い苛立ちを含んだ声で囁いて、手を離した 「じゃあ、朝練あるから行ってくる」 「さっさと出て行け。夏樹、手首見せてみろ」 いつの間に居たのか 夏樹の後ろに立っていた春樹が、夏樹の手首を見て眉間に深い皺を寄せる 顔が整っているだけに、怖ろしい 「あの野郎ッ、痕が残ってんじゃねえか」 「平気。そんなに痛くないから」
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!