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「ちょっと春樹兄さん。パジャマ脱ぎ捨てながら歩かないでよ」
朝ご飯を食べ終わった春樹が、パジャマを脱ぎ散らかして部屋へ戻って行く
誰が完璧な生徒会長様なんだよ
「うっせーな。夏樹何もしてねぇだろ。片付けろよ」
胸がズキッと痛む
何もしてないじゃなくて、何も任せて貰えないのだ
高1になっても、夏樹はやっぱり小さくて体力も無い
勉強も出来ないわけではないが、出来るわけでもない
唇をキュッと噛み締めて、散らかった春樹のパジャマに手を伸ばす
「何やってんの。チビでも邪魔だから退いてくれる?」
「ちょっ、離せ。降ろせよ」
制服を着た冬樹にひょいと抱き上げられ、急に高くなった視界が怖くて、声が震える
「気に入らない。春兄のパジャマいつまで抱き締めてんのさ」
「あ、せっかく拾ったのに」
冬樹が床に降ろした夏樹の手から、パジャマを取り上げ放り投げてしまった
拾わないと、春樹は自分で洗濯機に入れたりしないから
冬樹に背を向け、パジャマを取りに行こうとした腕を大きな手に掴まれた
「痛っ、冬樹痛い」
「ねえ、もう春兄のパジャマ抱き締めたりするなよ」
夏樹の華奢な手首を掴んだ冬樹が、低い苛立ちを含んだ声で囁いて、手を離した
「じゃあ、朝練あるから行ってくる」
「さっさと出て行け。夏樹、手首見せてみろ」
いつの間に居たのか
夏樹の後ろに立っていた春樹が、夏樹の手首を見て眉間に深い皺を寄せる
顔が整っているだけに、怖ろしい
「あの野郎ッ、痕が残ってんじゃねえか」
「平気。そんなに痛くないから」
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