兄と弟

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「冬樹を庇うのか」 ゾッとするほど温度の低い視線に、体が震える 二人とも優秀で見た目も良いから、普段はとても仲が良いのに、春樹も冬樹も、夏樹が関わると短気になる 「ごめんなさい」 冬樹と話してごめんなさい 春樹兄さんのパジャマを抱き締めて、ごめんなさい 家族に混ざってごめんなさい 俯いて、涙を必死に耐える 「チッ、生徒会があるから行って来る。遅刻するなよ」 「はい」 玄関が閉まる音を聞いて、ポロリと流れ落ちた涙を手で拭った 「僕も準備して行かないと」 制服を着て、鞄を持って鏡を見た 小さいな 見た目も普通で、全然格好良くない 知らない人が夏樹たち兄弟を見て、夏樹があの二人の兄弟だと言っても信じない 夏樹自身も信じてないのだから、当然だ 夏樹の華奢な体と、特徴のない顔は家族に似ていないのだから 「おはよう。夏樹ちゃん」 「ちゃんは要らないから」 夏樹をちゃん付けで呼ぶのは、夏樹が通う男子校で同じクラスになった桐山だ 「格好良い」近隣の女子高生たちが、桐山を見て騒いでいた 家に二人も居る規格外のイケメン程ではないが、羨ましい 平凡で小さな夏樹に、格好良いなんて言ってくれる人は居ないから 「俺さ。好きな子が居るんだ」 「え、そうなの?」 どんな子?って、聞いた方が良いのかな 「夏樹ちゃんは、俺に告白されたらどうする?」 「ええー?どうって僕じゃ分からないよ。告白なんてされたことないし」 「夏樹ちゃんが好きなんだ。お願いします。俺と付き合って下さい」
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