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ウィリアム・ギブスン。
一九四八年うまれ。ベビーブーマー。日本でいえば団塊世代。
アナーキーで猥雑なサイバースペースと現実とを行き交うサイバーパンクの牽引役。
ベトナム戦争への徴兵を忌避してカナダにいたギブスンは、六〇年代カウンター・カルチャーにどっぷりと浸かっていた。
サイバーパンクの法外な暴力、非道徳的な傾向はロックをふくむ対抗文化に由来する。
LSDを服用しておこなわれたインナースペースの探究体験なくしてサイバースペースはない。
時代は下り、ここで紹介するギブスンの新三部作では、かつて「異界」だったサイバースペースが日常の一部として存在する二〇〇〇年代の現代を舞台にする。
*
『パターン・レコグニション』では、特異なロゴ認識能力をもつ"クール・ハンター"ケイス・ポラードが、新たな広告の可能性を探るブルー・アント社の命を受け、自身もファンである〈フッテージ〉なる断片的な動画の制作者をさがすよう差し向けられる。
そして謎の一部(ある動画に仕掛けられた電子透かし)を解読したらしい東京のオタク(?)集団〈神秘道〉のメンバーに接触すべく日本へ旅立ち、仲介者のタキと会う。
各所からの情報収集のすえ、9・11以降、国際政治的な重要性を増すロシアの石油とフッテージが関係していることがわかり、9・11の際に親を亡くしたロシア人の双子の少女ステラとノーラとがそれぞれ配給者と制作者であることが判明する(グーグル三部作と呼びたくなるほど至るところでググる新三部作である)。
ロシアの(ポスト・ソ連の)変化の頂点におり、自分の名前をメディアから隠しながらも政府内に最高のコネクションをもつ彼女たちの叔父が、双子のサポートをしていたのだ。
三つの視点が交替しながら進む『スプーク・カントリー』では、ロック・バンドあがりのジャーナリストであるホリス・ヘンリーが、ブルー・アントがスポンサーをつとめるベルギー版『WIRED』こと「ノード」誌への記事執筆のために、ヴァーチャル・リアリティを利用した臨場感[ロケーティヴ]アートの作家に取材に行くよう命じられ、さらに臨場感アートの技術者ボビー・チョンボーへの接触を強いられる。
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