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ギブスン作品は、『小説から遠く離れて』の蓮實重彦なら「一種の命令に近い強圧的な関係を物語に導入」した「素人探偵」による、「宝探し」を「依頼と代行」した説話と呼ぶパターンとして、いずれの年代の作品も整理される。
依頼を受けた(あるいは不可避的に負った)主人公は、「宝」の二重性をはじめ知らない。
だがのちに中間地点[インターゾーン]を通過して真の意味(意図)へと辿りつき、ブツの価値が反転し、宝が宝として立ちあらわれる場に出くわす。
『PR』ではイギリスから日本を経てロシアですべてがあきらかとなる。
『SC』ではボビーが音楽データに架空の活動日誌をちりばめたiPodをカナダ経由でコスタリカなどへの輸送を試みていて、さらには彼がバグダッドへのマネー・ロンダリングに関係していたことが発覚していく。
新三部作に登場する、あるデータに別のデータを埋め込む(偽装する)情報技術ステガノグラフィは、二重性の象徴そのものだ。
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「サイバー」と「パンク」の二重を纏い登場したギブスンは、ときに表層をハイプに変えつつも、いまでもパンクス――一九四八年うまれのギブスンはむしろヒッピー世代だろう。「ヒッピー・パンクス」(クラウス・ディンガー)?――の心性を埋め込んでいる。
こうした二重性は『PR』や『SC』の舞台である「現代」を彩るテクノロジーをつくりあげてきたグーグルやアップルをはじめとしたシリコンバレーの諸企業が抱えもつものでもある。
ジョン・マルコフ『パソコン創世「第3の神話」―カウンターカルチャーが育んだ夢』やリチャード・バーブルックとアンディ・キャメロンによる「カリフォルニア・イデオロギー」には、反体制的な心性と起業家精神やニューテクノロジーへの渇望が同居するひとびとのすがたがえがかれている。
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