第1章

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ディストピアSF概論 ※虹釜太郎氏から、「アンビエント」概念再考のために(「ディストピアアンビエント」について考えたいので)「ディストピアSF」について書いてほしい、という謎の依頼を受けて執筆したもの。 ◆ディストピアSF概論  ディストピアSFは20世紀の産物である。  もっとも「サイエンスフィクション」自体が20世紀にうまれたものである――用語としては。  SFの起源は、メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』に置く(ブライアン・オールディス『10億光年の宴』)とか、ロマン主義的な聖杯探求譚に置くとか(笠井潔編『SFとは何か』)諸説ある。  よって、まあ、そのへんはおおざっぱに。 余談はさておきほとんどのディストピアSFは1930年代以降~20世紀後半になるまでは 1、社会主義国家(ソ連)や国家社会主義(ナチ)のような全体主義国家≒管理社会に対する風刺や批判 2、冷戦的な(≒核戦争前後的な)イメージの産物。ひろい意味では1のバリエーション。 3、資本主義≒消費社会批判。2で言うところの西側諸国における問題。  このいずれかにおおよそ分類できる。  ロシア革命によりソ連が現実に誕生する1917年までは共産主義/社会主義国家(社会)は「ユートピア」(原語では「どこにもない場所」の意味)として描かれていた。  周知のようにフーリエなどは「空想的社会主義」としてエンゲルスに批判されたほどだが、まさに『空想から科学へ』を実現したはずのソ連は以下略。  また、20世紀にいたり人類ははじめて人が兵器=科学力によって物のように、ゴミのように殺傷される「総力戦」(大量死)を経験した。  幸福をもたらすと考えられていたはずの思想(共産主義)や科学がまったく悪夢的な光景を生むという逆説を二度の世界大戦や収容所国家の誕生により人類は知ることになる。  ディストピア作品は、基本的にいちどユートピアとしてえがかれたものを反転させる、というプロセスを踏んで成立する。
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