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よって、最初から必ずしも輝かしいものとして描かれていないテクノロジーや社会については、ディストピアたりえない(ex.「サイバースペース」。ギブスンの描いた電脳空間はスタイリッシュなものではあったが、最初からダーティな側面も書いていた……のでネット空間を舞台にしたディストピア、と言ってもパッとしない/ピンとこない印象になってしまう)。
なお、私見では「アンビエント」という概念がSFに与えた影響はほとんどまったくない。
◆1、ジョージ・オーウェル『1984』(1949年)
ヴァン・ヘイレン、デヴィッド・ボウイから村上春樹までみんな大好き『1984』。
これなくては名作『未来世紀ブラジル』も生まれえなかったであろう古典的傑作。
みんな読まずに「ビッグブラザーは~」とか語れる便利アイテム。「核戦争後」の「管理社会」がえがかれている。
SF作家・樺山三英が短篇小説「1984年」で示唆したように、この作品にはオーウェルのスペイン内戦経験が色濃く反映されている。
スペイン内戦に義憤のもと参加したオーウェルは、しかし、いつしか内ゲバに巻き込まれ、たいへんな混乱(見えず、よくわからないがどこか背後で操っている敵がいる!?)を味わった。
離脱ののち、わるいのはソ連だ、共産主義国家だ、全体主義だ……と短絡化した果てにこの作品は生まれた。
「敵」を設定し「バビロン」と名指すタイプのヒップホップ/レゲエ、「システム」には与しない、などというサブカル左翼(文化左翼)はいまだにオーウェルタイプの権力像(ディストピア像)に基づいていると言える。
茫洋としたもの総体を敵としているため、何に抵抗しているのか具体性を欠くこと、ひいては「抵抗」の実効性に欠く。
フィクション向きの設定、というかフィクションである。
個人的にはこのタイプの作品の最高傑作は『ボトムズ』だと思う。
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