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◆4、アーサー・C・クラーク『都市と星』『幼年期の終わり』
ロバート・A・ハインライン『月は無慈悲な夜の女王』『異星の客』
※いっしょくたにすんなって話なんですが、都合上、大御所どうしでまとめ。
人類を超える上位の知性体を描き、また人類が上位の知性体になることをえがいてきたアーサー・C・クラークはラヴクラフトの影響を認めている(自伝『楽園の日々』)。
『都市と星』は少年が生まれ育った星がすべてシミュラークルでしかなかったことに気づき、旅立つ話であり、『幼年期の終わり』は人類が悪魔(のかたちをした上位の知性体オーバーロード)襲来を経て悪魔カレルレンを超える上位の知性体となりオーバーマインドに近づく。
そしてなんと進化から取りのこされた現生人類は地球上で踊り呆けているのである。
つまりどちらの作品も選民は道をあゆみ、現生人類は幸福な痴呆状態に置かれるのだ。
ハクスリーと違って後者を明確にディストピアとして描いていないことがクラークSFにおいてはより問題(?)である。
読み手のほとんどは進化の道をすすむほうに感情移入するから。
ハインラインはきわめてアメリカ的な作家である。
アメリカはイギリスの植民地支配から独立し、憲法に革命権を定めている国だが(それゆえアメリカでは新左翼SDSのメンバーが逮捕されると被告が裁判所に独立戦争時の軍服で現れたりする。彼らにとって「革命的」とは支配から独立を勝ち取る、ということなのだ『LSDドリームス』参照)、ハインラインSFにはこうした植民地の支配を転覆する、というモチーフがたびたび現れる。
ヒッピーのバイブルとされた(シャロン・テート殺人を行ったチャールズ・マンソンは息子の名前にこの作品の主人公を借りてつけた)リバタリアンSF『異星の客』と、右翼的=軍国主義的だと日本のSF界では論争になった(『日本SF論争史』参照)『宇宙の戦士』――おそらくいまでは映画『スターシップ・トゥルーパーズ』原作として、のほうが有名――とは、いずれも外的を組織で打ち倒し自由を勝ち取る、という図式が同じである。
敵が地球人(『異星の客』は植民地・火星が舞台)なのか、えたいのしれない虫なのかの違いはあるが。
『月は無慈悲な夜の女王』も、月の民衆が決起して地球から独立する話(『∀ガンダム』の元ネタのひとつ)。
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