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ずっとずっと、何百回も夢を見た。
嘘だと分かっていて止められない夢を。
夢だと分かっていて触れてしまう夢を。
「……生きてる、よな」
手を握ったり開いたりしても、その感触がある。
夢より自由に身体が動く。
ほら、やっぱり現実……。
「……っ」
振り向いてくれるなんて、思いもしなかった。
いや、嘘だ。
夢は見続けた。
きっとあり得ないと、何万回も言い聞かせて自分を抑制していただけだ。
「やっぱ、好きになった方の負け、だよな……」
可愛い。
会いたい。
きっと生涯あの人に振り回されると思うけど、振り回されていたいと思う。
都合の良い『虜』でいいと思う。
それでも、ただ、こっちに落ちてきてくれただけで。
俺は朔が部屋に入ってくるまで、そこでしゃがみ続けて、ニヤけた顔と熱い気持ちを抑え続けた。
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