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朔のまなざしは真剣だった。
「お前、姫さん忘れるために来たんだろ。
そしたら、その目的を果たさなくちゃいけない」
「…バカか。
たった一か月で、それは無謀だろ」
「…じゃあ、なんで来たんだよ」
朔が俺を睨む。
俺は小さくため息をついた。
「距離が欲しい。
棗との」
「……」
「もう物理的距離でもなんでもいい。
俺は棗に手を出せない場所にいきたい」
「……」
朔はそのまま黙り込んだ。
そしてしばらくするとまた、小声で口を開いた。
「ずっと、考えていたことがある」
「……なに」
「お前と姫さんの距離を取る方法」
まっすぐに朔が俺を見る。
「気休めにしかならないかもしれない。
でも、絶対的な距離が取れる。
どうだ?」
朔の小声で告げられる言葉に俺は耳をすませた。
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