3 追撃-knight-

35/37
前へ
/577ページ
次へ
「いえ、朔の言うことが妥当だと思います」 「ちょっ…、快!」 「今まで、すみませんでした」 「もう、なに冗談言って…」 笑っていた棗の顔が俺の顔を見て、こわばった。 俺の目が一瞬も笑っていないことに気付いたからだろう。 棗は唇を震わせて、それを噛みしめると、無理矢理笑った。 「冗談でしょ?快」 「今までが失礼だったんです。 改めます」 「ちょ、やめてよ!」 俺が頭を下げたのを見て、棗が俺の両肩を掴んだ。 細い腕だった。 きっと俺が本気で襲ったら折れてしまうかもしれない。 「棗」 それまでずっと黙っていた律の声がその場に凛、と響いた。 律にしては珍しい、すごみのある声だった。 「その辺に、しな」 「でも、りっちゃん…!」 「棗」 今度の名を呼ぶ声はさっきよりもずっと優しかった。 ポン、と棗の頭に律の手がのっかる。 ポンポン、と何度かあやすように揺れたその手のひらに、棗は不満そうではあるけれど、おとなしくなった。 「すみません」 俺はもう一度謝る。 何に対しての謝罪なのか、よく分からなかった。 それでもこれが、朔の考えた作戦だった。 『姫さんも律先輩も、「先輩」だろ? お前は本来、常に敬語で関わらなくちゃいけない相手なんだよ。 それをうまく利用するんだ』 『どういうこと?』
/577ページ

最初のコメントを投稿しよう!

873人が本棚に入れています
本棚に追加