873人が本棚に入れています
本棚に追加
/577ページ
あの日、キスをした日。
その日できた手の甲のキズは一か月たった今、もう消えた。
キズは消えても、過去は消えない。
消すことはできない。
あの時、キスをしたことは、日に日に重くなっていった。
冷静になればなるほど、自分の上にのしかかってきた。
これは生涯、俺が抱えよう。
そして、この、どうやっても消えることのない感情も。
現実は変わらない。
あの日キスしたことも。
それで逃げたことも。
会いたくて、会いたくて、死にそうだったことも。
今も、こんなに愛おしいことも。
だったら受け入れるしかないんだ。
受け入れて、握りつぶすしかない。
見えないように、隠すんだ。
俺と棗の幸せは決して交わることはない。
だったら俺が幸せを捨てればいいんだ。
それが、俺の罪滅ぼし。
――それが、俺の恋愛なんだ。
最初のコメントを投稿しよう!