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恋は育むものだと、昔なにかの恋愛小説で読んだ。
なるほど、意味は少し分かる。
よく好きじゃない女の子の好意を受け取って、付き合う男がいるけれど、それが悪いことではないんだと最近知った。
人に好かれている。
それだけで自分もひどくその人を好きになる。
本当にあるんだ、そういうことは。
懐く子犬を可愛がるように、俺は確かに、春よりも夏、夏よりも今、棗を愛おしく思うようになっている。
だから、だ。きっと。
こんな気持ちになるのは。
頭の中に何度も何度も反芻してるのは――。
「りっちゃん!
この後、りっちゃんの家行ってもいい?」
「ダメだ、この後塾って言っただろ?
だから快の誕生日切り上げてきたんだから」
快の誕生日パーティが終わって、アパートを出ると、棗が俺の腕にしがみついてきた。
じゃれついている犬みたいで、振りほどけない。
でも、この後塾があるのは事実で、俺はやんわりとその腕を外しながら言う。
「二週間後の日曜はどう?
それだったら勉強会、できるけど」
「えぇー、勉強会?
りっちゃんと遊びたいのに」
「こーら、受験生が何言ってんだ」
ぐしゃぐしゃと髪の毛をなでると、棗が「やだー」と言ってクスクス笑う。
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