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この後塾に行くのが嫌だなって思ってしまうのは、こうやって棗が引き留めるせいだ。
本当に『彼女』って生き物はずるい。
『今日の夜、よろしくね』
なんとなく頭に残っている言葉がまた聞こえてくる。
快と棗が仲良いことなんて前からだし、俺と付き合う前から、そうだった。
気にしたことなんてなかったのに。
俺も大概都合が良い男だな。
姉貴に言ったら殺されそうなワガママな感情を持つ自分に少し笑った。
「りっちゃん、勉強会だよね?今日…」
「ん。
分かってる…」
ちゅ、と棗の眼瞼にキスを落とすと、棗の肩が震えた。
快の誕生日から、二週間たつ。
約束の日曜日がきて、棗が俺の家にきた。
お互い絨毯の上に座って、勉強を開始しようと思っていたのに。
なぜ、こうなったのか。
抱き寄せる肩が細くて、香りは甘い。
キスはもう何度もしたのに、全然飽きない。
愛しい。
「もう、全然できないよ…」
「いや?」
分かっててわざと聞く。
耳元に唇を寄せて、耳を食む。
ピクリ、と震えた棗は、囁くような声で、
「そんなわけない…」
と言って、俺の服をぎゅっと握った。
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