4.直感-prince-

10/60
前へ
/577ページ
次へ
やいやいと達樹と佐野さんが言い合ってる中、俺は一つの自分の中で浮かんだ考えを口にするのをやめた。 …棗と付き合った理由。 それは、多分棗が可愛いからじゃない。 現状、結果論として、俺は今棗を可愛がっているつもりだし、大事な彼女だ。 でも、俺が棗と付き合った最大の理由は、快が絡んでいるからだった。 三人の関係をバラバラにしたくなかった。 棗も快も失いたくなかったから。 そう言ったら、この二人はどんな顔をするだろうか。 ホモか、と達樹に突っ込まれるのがオチだな、と思った俺の判断は多分正しい。 そして、きっと棗の告白を受けた判断も。 だって今俺は確かに、幸せだと思っているんだから。 「恋してるか、してないかなんて関係ないだろ、男と女は」 「重要よ! 何言ってんの、あんたは」 「誰も証明できねえだろうが、今付き合ってる人が相方に恋しているかどうかなんて。 結果、うまくやってんなら、なんでもいいだろ。 だから、女はめんどくせぇんだよ」 「達樹のアホー!」 ふいっと達樹は佐野さんから視線を外すと、面倒そうに机から降りた。 大きな背中を向けて、達樹は首だけで振り返ると、ベー、と舌を出す。 それに、激昂する佐野さんをなだめながら、俺は恋をしているのだろうか、とぼんやり思った。
/577ページ

最初のコメントを投稿しよう!

873人が本棚に入れています
本棚に追加