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やいやいと達樹と佐野さんが言い合ってる中、俺は一つの自分の中で浮かんだ考えを口にするのをやめた。
…棗と付き合った理由。
それは、多分棗が可愛いからじゃない。
現状、結果論として、俺は今棗を可愛がっているつもりだし、大事な彼女だ。
でも、俺が棗と付き合った最大の理由は、快が絡んでいるからだった。
三人の関係をバラバラにしたくなかった。
棗も快も失いたくなかったから。
そう言ったら、この二人はどんな顔をするだろうか。
ホモか、と達樹に突っ込まれるのがオチだな、と思った俺の判断は多分正しい。
そして、きっと棗の告白を受けた判断も。
だって今俺は確かに、幸せだと思っているんだから。
「恋してるか、してないかなんて関係ないだろ、男と女は」
「重要よ!
何言ってんの、あんたは」
「誰も証明できねえだろうが、今付き合ってる人が相方に恋しているかどうかなんて。
結果、うまくやってんなら、なんでもいいだろ。
だから、女はめんどくせぇんだよ」
「達樹のアホー!」
ふいっと達樹は佐野さんから視線を外すと、面倒そうに机から降りた。
大きな背中を向けて、達樹は首だけで振り返ると、ベー、と舌を出す。
それに、激昂する佐野さんをなだめながら、俺は恋をしているのだろうか、とぼんやり思った。
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