873人が本棚に入れています
本棚に追加
ピロロン、と鳴った携帯でハ、と我に返った。
しんと静かな図書館で何人かが振り向く。
たまたま近くを通りかかった図書館員が、
「携帯はマナーモードでお願いします」
と小声でささやいてきたので、俺は
「すみません」
と頷き、携帯をポケットから出した。
せっかく出したので、携帯を見る。
すると画面に表示されていたのは、棗のお母さんからのメールだった。
『棗と連絡が取れないから、多分りっちゃんのとこにいると思って連絡しました。
エアコン直ったから、戻っておいで、と伝えてください。
迷惑かけてごめんね』
「……?」
なんのことだ?
聞いたこともない話で、俺がそれに対して質問すると返事はすぐ帰ってきた。
『りっちゃんのとこに行かなかったのね、ごめんなさい。
うち、一時間前くらいにエアコン壊れちゃって、りっちゃんのおうちに避難しなさい、って棗にいったんだけど…。
もしかしたら快くんのとこかもしれないわね。
快くんに連絡してみるわ』
快の家、という言葉が気になった。
棗のお母さんの予想はほとんど確実にビンゴだろう。
棗が俺の家以外で避難するとしたら、きっと快のところに行く。
俺は返信をタッチすると、慌ててメールを返した。
最初のコメントを投稿しよう!