4.直感-prince-

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俺は、お邪魔します、と一声かけると快のお母さんの段ボールを受け取った。 「はい。 これ、どこへもっていけばいいですか?」 「ごめんなさい、すぐ近くなのに…。 あの、押し入れの傍に置いておいてくれるかしら」 「分かりました」 「そしたらすぐ二階上がっちゃって? なっちゃんも来てくれたのよ。 カモミール持ってきてくれたの」 「ハハ、棗らしいですね」 そうなの、と嬉しそうに快のお母さんが笑う。 俺は段ボールを言われた場所に運びながら妙だな、と思った。 何度か俺が遅れて快の家に来たことはあるけれど、その時は大抵棗の声が下まで聞こえていた。 棗の声は透き通ってて、そしてハキハキしているのでよく通る声だ。 快の声が聞こえないのは、いつものことだけど、棗と快が盛り上がっていそうなのに。 ドサリ、と段ボールを置いて耳をすますけれど、やっぱり二階から物音ひとつしなかった。 「……」 ギシ、と階段を上る時、階段が少し軋む。 その音をなるべく潜ませて、俺はゆっくりと階段を上った。 ……別に、快と棗が二人きりのことなんてよくあることだ。 俺と付き合う前なんかは特に。 さして、珍しいことでもないし、今更こんなに疑ったって仕方がない。 そう思うのに、階段を上れば上るほど、無音の二階が気になった。 ……棗、寝てんのか? それで快が呆れてるのかも。 その可能性が一番高いな、と思いつつ、まるで泥棒のように階段を上がる。 あの二人、俺がいないとき、どうしているんだろう。 それが気になる悪戯心みたいなものもあった。
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