4.直感-prince-

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どんなに頭の中をごまかしても、心臓は正直だった。 バクバクと、身体が爆発しそうなほど高鳴るそれに、俺は何度も落ち着かせようと深呼吸をする。 だけど、それでも止まらない。 いつのまにか握っていた両手は、ガタガタと小刻みに震えていた。 ――髪に、キスをしていた。 あの、快が。 二人が浮気しているのかもとか、なんで、とかそんなことは考えられないほど衝撃的な光景だった。 快は、不愛想だけれど誠実で、優しい男だ。 絶対に彼氏がいる女に手を出すようなバカな男じゃない。 それは15年間見てきて、俺の中で絶対的な事実だ。 今も、これからも変わることはない。 快の苦しそうな表情が目に焼き付いて離れなかった。 髪、なんて俺はキスをしたいと思ったことがない。 あの柔らかな髪に触れるのは気持ちいいけれど、でも、だからってキスをしたいとは思わない。 するなら唇がいい。 柔らくて、もっと心地よいような――。 「……っ」 違う。 快は、違うんだ。 棗の髪にキスがしたいんだ。 棗の声はひとつも聞こえなかった。 もしかしたら寝ているのかもしれない。 棗はベッドの上にいるようだった。
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