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やっと迎えた4月のあたたかな日差し。
ベッドの上に寝転がって漫画を読んでいると、ドタバタと階段を上りあがる音が聞こえて、ガバっと起き上がった。
それとほとんど同時に扉が開く。
「快っ!!」
「……なん」
「ちょ、どいて!邪魔!
ちょっと窓借りるから!」
「……はっ?」
嵐のようにやってきたその人が、俺を押し分けてベッドに上り、ベッドの横についている窓から外を眺める。
食い入るように窓の外を見つめる彼女の背中を見て、俺は小さくため息をついた。
この必死さは、いつもと同じパターンだ。
「……また、律が告白されてんのか…」
「そう、そうなのっ!
頭なでろ、頭なでろ!
……あ、いやいや、人の不幸は望んじゃだめなんだ…けど…」
人の不幸は望んでもいいから、まず警戒心を持ってほしい。
俺はこっそりとベッドの上から降りてカーペットに座る。
そこからまた棗の後ろ姿を見ようとして、――視線をそらした。
ダメだ。あの人。
ベッドの上で膝たちして窓からのぞいているせいで、スカートから覗くふとももがひどく無防備だ。
同じ人間かと思うほど白くて、見るだけで分かる柔らかそうなそれ。
それが自分のベッドに上っていれば、嫌でも変な気分になる。
ダメだ、理性、理性……。
「うぅーー、でもお願いします。
りっちゃんがあの子を好きになりませんように…!」
棗が誰に願っているんだか、一人でぶつぶつと呪文のように唱えている。
そのことが、少し俺を冷静にさせた。
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