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ミステリと詩 あるいは「ミステリはサブカルチャーではない」
■とりあげる本
古野まほろ『天帝のみぎわなる鳳翔』
『現代詩手帖』二〇〇九年四月号「ゼロ年代詩のゆくえ」
一篇の詩が生まれるためには、
われわれは殺さなければならない
多くのものを殺さなければならない
多くの愛するものを射殺し、暗殺し、毒殺するのだ
――田村隆一「四千の日と夜」より
「ミステリと詩」について、かんがえてみたい。
――かつて島田荘司は『本格ミステリー宣言』において、ミステリを書きたければ詩を書けと言った。
エドガー・アラン・ポーやアガサ・クリスティー、ニコラス・ブレイクは詩人でもあった。
エラリー・クイーンは『犯罪は詩人の楽しみ 詩人ミステリ集成』なるアンソロジーを編み、日本でも俳人の齋藤愼爾が『俳句殺人事件』『短歌殺人事件』『現代詩殺人事件』という短句ミステリ三部作を編纂した。
ブレイクの友人にはミステリ評論も手がけた詩人W・H・オーデンがいた。
そのオーデンとならぶ二〇世紀前半を代表する英国詩人T・S・エリオットの詩劇『大聖堂の殺人』が中井英夫『虚無への供物』以上に自身の血肉になっていると西澤保彦は述べた(『本格ミステリー・ワールド2007』)。
エリオットの代表作は日本の戦後現代詩に屹立する「荒地」の名に冠せられ、ダイイング・メッセージをめぐる探偵小説『Xの悲劇』の翻訳者とビルマで戦死した「M」の「遺言執行人」を自称する詩人は同じ人物――鮎川信夫だった。
荒地派の鮎川や田村隆一、北村太郎は大戦間ミステリの翻訳者である。
ハヤカワ・ポケット・ミステリの初代編集長にして戦後最大の詩人・田村は『田村隆一ミステリーの料理事典 探偵小説を楽しむガイドブック』を書いた。
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