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■枯れた技術の水平思考――チープなオールドメディアも視点次第
リアル脱出ゲームと凡ミスの違いの三つ目は、提供価値自体ではなく発想法にある。
「枯れた技術の水平思考」だ。
これは任天堂でゲームウォッチやゲームボーイを開発した横井軍平が唱えたものである。
「終わった」と思われているチープな技術も、見せ方、使い道次第で顧客に刺さる。
ゲームでも家電でも小説でも、作り手はスペックや複雑さを志向しがちだ。
でも客が求めているものはそこか?
シンプルに、しかし斬新な体験を提供できないか。
SCRAPの加藤は横井を敬愛し、八〇年代に流行するもその後マニアのものと化していたゲームブックという形態でリアル脱出ゲームを展開したのも、「枯れた技術の水平思考」に基づく。
そもそも開発に数億円かかるデジタルゲームをつくれる資金のないSCRAPが、どうしたらデジタルゲームに勝てるおもしろいものがつくれるか?
を軍平マインドを使いひねりだしたのがリアル脱出ゲームだった。
小説、ミステリ、本……どれもある種やり尽くされたと思われているオールドメディアでありジャンルだが、「枯れた技術の水平思考」を使えば、あたらしい体験をつくれるはずだ。
■まとめ――あたらしいミステリ体験をブランディングするために
あたらしいミステリ体験デザインのためのポイントは以下だ。
・「ミステリ」というジャンルでくくられているその作品、作家独自の提供価値は何か。
顧客に対して一貫して打ち出している(打ち出したいもの)は何か。それは顧客が重要だと思っていることか。
その重要な部分で、ほかの何かより優れた「差」を持つか
・作品をなんらかの経路で知って(事前期待)から、買って読んで感想(購買後の口コミ)を世の中に放つまでの顧客の行動プロセスを認識し、体験フローをデザインする
・右記二つに際し、謎と解明のしかけづくりなど、ミステリファンの武器を使う。
「枯れた技術の水平思考」(横井軍平)でも「論理のアクロバット」(都筑道夫)でも、好きなものを使えばいい
出版の世界には、アイデアメイカーが無数にいる。
「小説」から「体験」を視点を変えるだけで「おもしろそう。読んでみたい」「やってみたい」と顧客に思わせる刺激的な切り口が無数に浮かぶはずだ。
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