休みを下さい…

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         【1】  「うむ、芸術的な仕上がりだ。店内の内装、装飾、雰囲気、肝心の料理も雑誌に乗せるのには持ってこいだね!!」  「はあ、有り難う御座います」  マン・オブ・ディテール。和訳する所の拘る男と言われる、週刊誌『コミニティ』記者、荒木功様は、店内にお見えになられるなり、 お店の彼方此方にカメラのシャッターを切られています。 当店『アリス』と致しましては誠に有り難く嬉しい限りではありますが、  「あの。荒木様? お料理が冷めない内にお召し上がり下さいな」  来店から数時間経過してもカメラをしまう気配を見せる事はありません。  「彼のカメラマン魂は冷める事は無いと思うよ」  同行された作家の本市平次様は、「うん、これ巧いね。流石は沙織仕込みだ」と仰いながらもくもくとお料理を召し上がられるだけ。  「荒木君、これ貰うよ」  「駄目だ。取り終わる迄待ってくれ本市君。ついでに従業員の笑顔と働く姿も撮っておこ……ぶは!」  荒木様は私の方を向き直ると、一瞬手を止められました。  「何と言う事だ!従業員さんが巨……巨……」  「キュヌーで御座いますか?」  「これは撮れ高高いぞ。るかぽにょんのマンキニに負けていない」  荒木様は私――特にキュヌーを――パパラッチの如く激写して下さいました。 猶、キュヌーは当店にとってロッテリアのスマイルと同様の無料のサーヴィスでは御座いますが、 それ以上のサーヴィスの請求となりますと、お代を頂く事になります。
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