プロローグ

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――――誰? 不意に何かが顔に触れた。 それを確かめようと目を開くけど、涙で視界が歪んでよく見えなくて。 解るのは、涙の跡を辿るその人の温もりだけ。 「…………いいから、もう寝ろ。」 ぶっきらぼうな言葉。 だけど、身体の芯に響くような声色が優しさに溢れているから。 心に刺さった棘の痛みを和らげていく。 消え入りそうな意識の中で、頬に触れる誰かの指先を必死に追い掛ける。 まるで儚く消えるしゃぼん玉を掴まえるように――――。 .
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