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「桃ちゃん、学習しないね。俺、読み合わせだからって手を抜かれるの嫌いなんだよね」
「手を抜いてるつもりはありません」
「……じゃあ、72ページ3行目のト書きに何て書いてある?」
「……身を切り裂かれるような切なさに涙を流す」
「よく読めましたー」
茶化した物言いとは裏腹に、凍り付く稽古場。
鴨井さんだけが鼻歌が聞こえてきそうな笑みで私を見つめる。
「何で泣かないの?俺の台本じゃ泣けないってこと?」
「違います。大切なのは涙を流すということより、観客がその演技を観て『泣いている』と思うかどうかじゃないですか?」
「なるほどね。だけど俺、嘘は嫌いなんだよね」
「……」
「まぁ、百歩譲って『泣いている』って見えるんであればいいんだけど、演技が下手で全く見えないからさ」
自分の演技力の無さは十分理解している。
だけど、私は――――。
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