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「桃、今から2時間くらい時間あるか?」
お風呂上がりにキッチンへ立ち寄ると、投げるように渡されたミネラルウォーターのペットボトルを辛うじて抱き止める。
アオさん御用達の海外メーカーのそれは、少し硬めで美味しいのだけど。
「……いいですよ。自分の冷やしてるんで」
「やるよ。遠慮するな」
「……ありがとうございます」
兄妹ごっこを始めてから気持ち悪い程の柔らかさを見せるアオさんになかなか慣れない。
ベタに甘いお兄さんな訳じゃないけど、稽古中に孤軍奮闘する私をサラリと気遣う姿は実にスマートだ。
裏が読めず牽制する私の耳元で、聡美さんは嬉しそうに囁いた。
『案外、こっちのアオが本当だったりするのよ』
『は、はぁ……』
聡美さんの言葉を思い返していると、アオさんが1枚のDVDをヒラヒラと振った。
「ちょっと付き合えよ。役者として見て損はない」
「はい……」
ソファーに座る彼は私も座れとばかりに隣をポンと叩く。
並んで座ることに躊躇いつつ、ソファーの端にちょこんと腰掛けると、アオさんは早速プレーヤーにDVDをセットした。
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