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「……解りません。泣くことがそんなに大事ですか?」
「いや、そうじゃないさ」
ティッシュを何枚か引っ張り出したアオさんが目元を拭う。
「……さっきの映画、泣きたくならなかったか?」
「なりました」
「じゃあ泣けばいいじゃないか?」
「そんな恥ずかしいことできません」
「人前で感情を解放するのが恥ずかしいなら、お前は何故芝居をしてる?」
「それは……」
私は…………。
私をいじめた奴等を見返してやりたかった。
そんな下らない理由をアオさんに見透かされてるような気がして。
……彼の視線が、痛い。
「これは、とても大事なことだ」
アオさんの声は決して厳しいものではない。
だけど、胃の辺りをギュッと鷲掴みにされるような重みを含んでいる。
「…………桃、お前は何の為に芝居をしてるんだ?」
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