13/14
68人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
「……あの日」 ソファーに深く凭れたアオさんがポツリと呟く。 「歓迎会の後、酔っ払ったお前をここに連れて帰ったよな?」 「……はい」 今更こんな話を蒸し返してどうするつもりなんだろう。 アオさんは私をチラリと見ると、何とも言えない微妙な表情をしながら目を逸らした。 「…………綺麗だったんだ」 「……」 「あの時、悔しいと呟いて泣いた桃を綺麗だと思った」 「なっ、何言ってるんですか?!」 「勘違いするなよ。別に桃を口説くつもりはない」 アオさんは頭を掻きむしりながら、またチラリと私を見る。 「素直に感情を露にして涙を流せる桃が羨ましいよ。俺は映画を見たり、役に入り込んで涙を流すことは出来ても、俺自身の感情を表に出せない」 ――――頬が熱い。 こんな風に誉められることに慣れてない。 .
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!