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「桃(もも)ちゃん、飲んでる?」 「は、はいっ!ありがとうございます」 人と打ち解けるのが苦手だ。 だから歓迎会という場では、何処に身を置いていいのかいつも困る。 ……とは言うものの、先日オーディションに合格したばかりの劇団で、しかも私達新人の歓迎会となれば参加は必須で。 「ほら、グラス空いてるよ。何にする?」 「じゃあ、カシスオレンジお願いします」 「了解!すみませーん!カシスオレンジ1つ、大至急ね!」 親しげに私へ絡んでくるのは、この劇団の座長で作演出家の鴨井智之(かもいともゆき)さん。 気配りが上手くて、こういう場が苦手な私をサラリと周囲に巻き込んでくれる。 「あ、桃ちゃん!鴨井さんの独り占めは良くないな」 「おっ、良平。ここ座れよ」 「お邪魔しまーす」 生中を片手に割り込んできたのは沢良木良平(さわらぎりょうへい)君。 彼も私と同じく今回のオーディションで入った新人だけど、実は鴨井さんの後輩らしく、さっきから顔見知りの劇団員の人達と楽しそうに話し込んでいた。 .
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