時に美しさは残酷で

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 褒似(ホウジ・ジの漢字は本来女偏)は、褒国の貧しい行商夫婦の間に生まれた娘だった。貧しいながらも、愛情をたっぷりと注ぎ込んで娘を育てた夫婦。  成長した褒似は、決して美男美女とは言えない夫婦の、良い所だけを受け継いだかのように美しい娘に育った。利発で両親の行商の手伝いをして、あちこちの土地へ行った。  「お母様、泉の花を摘みに行って参ります」  「気をつけていっておいで。遅くならないようにね」  大きな里(リ・町のこと)で行商をしていたが、早くに売り切れたので、時間が出来た褒似は小さな泉の側にある花を摘みに出かけるところだった。  陽光を浴びた美しい笑顔を浮かべ、手を振って母に応えると、軽やかな足取りで泉に向かう。
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