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「無論だ。三年は少なくとも準備にかかる。それからの事はどうなるのか、私でも分からぬ。ただ、この計画はそなたならば必ず成功する」
時に冷酷で非情に徹せるこの人物に言わせる程の何かが西施にはあった。それはただ美しいというだけでは無いという事。既に西施は二親から売られた身で、帰る場所など無い。行く宛も無い。それでも、この計画に加担するのは躊躇われていた。
范蠡は返答を急かさなかった。
「室を用意させよう。この隣だ。私の隣であれば、邪な心を持つ者が居ても、下手な行動は取らない。それでも万が一が起こったならば、私を呼びなさい」
使用人に告げて室を整えさせ、西施は范蠡の隣に移った。そこで西施は先程の話をゆっくり吟味した。難しいが、やってみたいという野心はある。西施は儚げな美しさの外見とは裏腹に自分の力だけで何をどこまでやり遂げられるのか、常に挑戦者で在りたい娘だった。
性格だけで見れば、人の上に立って、周囲の人を引っ張っていく力強さを持っていた。そんな負けん気の強さを発揮して、思う存分自分の力を試せる場所が提示されている。これを逃すべきではない。そう判断した。
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