乗り続ける生涯の道

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 その家の前の畑で野菜を収穫しているらしい娘がいた。娘、と判る若々しい後ろ姿。三人の兵士の目当ての娘か?  足音が聞こえたのか、娘が振り返る。  その、瞬間。  兵士達の世界から、先ず音が消え、次いで周囲の景色が消え、最後にある一種類の香り以外が消え失せた。  微かな香りは、女になる前の少女特有の若々しい香り。周囲の景色など見えなくなる程の目も眩む美しさ。他の情報を一切遮断して聞こえなくなる程に吸い込まれそうな、澄んだ目。  そして何より、全てを擲っても守りたくなるような庇護欲を誘う瑞々しい柔肌が、手足から見受けられる。  ――間違いなかった。  彼ら三人の兵士達が探していた娘であることが、この時点で証明された。
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